FC2ブログ

ぱっちりひつじ「ゆめにっき2」

2019-01-08_032433.jpg

http://www.pacchiri-hitsuji.com/

音楽作品には2種類あると思うんですよ。試聴で断片的に聞いただけである程度の内容が把握できる比較的シンプルな音楽性、その反対に試聴だけではほとんど把握できない情報量多い音楽性。
まあどっちが良いとか悪いとかの話じゃないんですけどね。分かりやすさ、取っ付きやすさの問題ですね。

今回紹介する「みんなのうた」+「プログレメタル」な音楽性のぱっちりひつじはまさに後者のタイプ。試聴だけじゃこのサークル(バンド)の凄さは三分の一、四分の一すら感じ取れないと思う。だから是非とも試しに聞いて頂きたいんですよね。このバンドを雰囲気だけで判断して聞かずにスルーしてる人がめっちゃ多いと思うんで。凄いんですよこのバンドは。まじで。様々なアイディアや仕掛けが満載の音楽性なんで、例えこの雰囲気やプログレ要素に興味なくともきっと楽しめる部分があるはずだと思うんです。
3月開催の「幻想音楽祭」にも参加するみたいなんでその機会に買ってみるのはいかがでしょうか。

その幻想音楽祭に参加を表明するだけあって、ファンタジーにカテゴライズ可能な音楽性だとは思うんですけどね。ただ、同人音楽界隈で一般に思い浮かべるようなファンタジーとはちょっと趣きを異にする感じはあるかな。この界隈で需要のあるようなラノベ系、RPG系の厨ニファンタジーじゃないんですよねえ。もう全然オタク文化の外って感じのメルヘン風味っていうか。「みんなのうた」…NHK教育系…と言うにはちょっとホラーやグロ風味が濃いんで完全には当てはまらないと思うけど。まあとにかく独特。だからこのぱっちりひつじの「ファンタジー」が同人音楽リスナーにはあんまり刺さらないってのは正直あると思う訳ですよ。

それでもやっぱりおすすめしたい訳です。何故ならこの音楽は独特すぎて他じゃ絶対に聞けないから。ぱっちりひつじでしか体験できない音世界があるから。「替えが効かない」音楽性って最強だと思いません?

さて今回の待望の2ndアルバム「ゆめにっき2」についてですね。実はかなり紆余曲折の末に発表された作品です。
2015年リリースのマキシシングル「ドSピエロのボブ」以降3年半もの長きに渡って沈黙していたので、てっきりもう活動停止してしまったのかと誰もが思っていたことでしょう。個人的にも2ndアルバムへの期待は高かったんですがぶっちゃけほとんど諦めてました。
実際のところ、この2ndアルバムの楽曲は2014年の時点でほぼ出来上がっていて、レコーディングだけが出来ずに長い時間が経ってしまったようなんですが…まあ実質的な活動休止期間だったんでしょうね。しかしそのまま自然消滅なんてことにならずに無事再び活動再開してこんな素晴らしいニューアルバムを届けてくれたことにはほんと感謝です。

なので、3年以上かけて徹底的に作り込んだ作品って訳ではないみたいですが、でもその沈黙期間の間に各メンバーもそれぞれスキルアップしてたのではないかと想像しますし、やはり長い時間かけたのは決して無駄ではなかったのでしょう。1stアルバムと比べれば演奏の充実度は格段にアップしているし半端なく密度の濃い作品に仕上がっています。
プログレという観点から評価すれば今作のほうが圧倒的だと思うんですが、だからと言ってこの2ndアルバムが1stアルバムの上位互換とも言い切れないんですよね。ってのは、1stアルバムは世界観のぶっ飛んだ尖った楽曲が満載でしたし(特に「かみのけがとれた」の悪趣味っぷりと「あみずし」の気持ち悪さは半端なかったから…)そしてアルバム最後「ひつじ」に仕掛けられた衝撃的な「オチ」も秀逸でしたからね。それに対して今作は割と全体的にマイルドで聞きやすい方向性になってるっていうか? 一般向けとまではいかないけど、角が取れたような感じはあるかもしれない。
だから、完成度としては今作が上、コンセプトとしての突き抜け方では1stに軍配が上がるのかなぁと。それぞれの良さがあるってことですな。まあ、角が取れたって言っても他のアーティストに比べれば依然として個性的すぎるんですけどね。

収録曲数は11曲。トラックは12曲あるんだけど最後の12曲目はセリフだけの短いトラックなんでやっぱ11曲で。

1曲目「たいようのさいご~その1~」、イントロ的なインスト曲。デスボっぽい叫び声とかも装飾的に入ってるけど。「その1」と銘打たれてますがこれは3パートから成る組曲構成になってまして、それぞれがアルバムの頭と中盤と最後に配置されてます。とはいってもこの組曲の各パートは曲調バラバラだし音楽的には繋がりが希薄で、あくまでコンセプト的な役割を担ってる感じでしょうかね。
この「その1」は短い尺ながらも最もドリームシアター系プログレメタルな展開が聞ける楽曲です。

2曲目「ナナシザメ」、なんとアルバムの序盤からいきなり14分越えの大作。当然ながら作中のハイライト的楽曲です。
ちなみにマキシシングルの「ドSピエロのボブ」にも「ほんじつのニュース」という15分の長尺曲があったんですがそっちは曲の大半がアバンギャルドな即興演奏で占められているというある意味で長尺詐欺(?)な楽曲でしたが今回は違いますよ。きっちりと内容の詰まった正真正銘の長尺曲。
ってかこれはぱっちりひつじ最高傑作の楽曲と言っても差し支えないでしょう。今までになくシリアス寄りな曲調で、もはや海外のプログレバンドと比較しても遜色ないレベルに達した本格派演奏を聞かせるガチ曲。持ち味であるコミカルでシュールなテイストも最低限に抑えられてるんで必ずしもぱっちりひつじ「らしい」楽曲とは言えないかもしれないですがプログレという観点からしたらこれは到達点と言える完成度でしょうね。
みんなのうた+ドリームシアターと言われるぱっちりひつじの音楽性ですがこの曲における清涼感にあふれる叙情性はドリームシアターというよりかは北欧プログレ的ですね。ギターソロもキーボードソロも超絶メロディアス。
やっぱ今作の鍵を握るのはギターソロですね。アルバムの要所要所で泣きまくりな叙情リードギターが大活躍していてそれが今作のプログレとしての聞き応えの核となってる。1stアルバムはもっとキーボード中心だった気がするけど今作はギターの存在感が大幅に増してる。
14分の長尺ってことでもちろん複雑な展開もあるんですがどのパートも非常にメロディアスなので退屈な部分は全く無いですね。シリアス寄りな曲調とはいえ歌パートはいつも通り「みんなのうた」なノリだしそこも問題なし。ストーリーも明確で分かりやすくて良い。物語音楽的にも楽しめるんじゃないかな。

3曲目「ホラーティッシュのうた」、打って変わって陽気でポップな曲調。サビのキャッチーさも作中随一。ちなみに曲中に漫才みたいなノリのセリフパートがけっこう長めに入るので耐性の無い人には少々小っ恥ずかしい感じかもしれない。まあ長めにセリフ入るのはこの曲と次の曲だけなんでご心配なく(?)。最初に聞いた時はもし作中のセリフ率が高かったらどうしようって焦ったりもしたけど。

4曲目「ドSピエロのボブ」、マキシシングルで先行リリースされた曲のアルバムバージョン。シングルバージョンから細かい手直しされてるみたいですが一番の違いは間奏部分で入るセリフ。最初聞いた時はセリフいらねえだろって思ったけどこっちのバージョン聞き慣れちゃうと逆にセリフ無しバージョンが寂しく感じてしまうっていう。
楽曲についてはシングルの時も書きましたけどこれもぱっちりひつじ最高傑作候補。A.C.T系プログレポップをぱっちりひつじ流に解釈して極めたような完成度の高さ。

5曲目「ご・アマーモス」、もうタイトルの時点でシュール感あふれてて実際歌詞も難解だけど曲調はなかなかシリアス寄り。

6曲目「たいようのさいご~その2~」、3分ほどのインスト曲なんだけどこれがまたなかなかにやり過ぎっていうか、ゲイリームーアみたいなブルージーな泣きのギターソロの独壇場でぱっちりひつじの曲だというのを忘れてしまいそうなくらいシリアス。大作ナナシザメと並んで今作の「本格派」な方向性を象徴する曲。

7曲目「にぎゃにぎゃじゅむじゅむ」、7分近くの尺のある曲ということもあってやはりプログレ的な聞き応えのある楽曲。後半に向けて徐々に盛り上がっていく展開が素晴らしい。曲名も歌詞も訳わからんと思ってたけどブックレットのイラストを見てこれがDNAについての歌だと気付いた。

8曲目「ナノしば」、再び陽気なポップチューン。「ドSピエロ」ほどに極まってはいないけどやはり完成度の高いプログレポップ。1stの同系統曲「ぶらぶらねこ」辺りと比べても演奏やアレンジの鋭さが格段に増してるのを感じ取れる。

9曲目「ついらくせんようマシン」、なんと初の男性ボーカルメインの曲。歌詞がコミカルっていうだけで曲調は完全にシリアスなハードロックって感じですなぁ。
歌パートもカッコいいんだけど一番の聞き所はギターソロですな。まるでメガデスみたいな超メロディアスなソロ。

10曲目「かえってきたナナシザメ」、曲名通り「ナナシザメ」の再演的な短い曲なんだけどこれが切なさMAXなアレンジに仕上がっていてなかなか涙腺に来る。

そしてラスト曲「たいようのさいご~その3~」の感動的な展開へ見事に繋がる。この終盤の流れは完璧すぎますな。まあいわゆる人類絶滅ENDをシュールに描いたような世界観なんですが、全てのメロディがいちいち感動的すぎて感情を揺さぶられること請け合い。1stアルバムの「ひつじ」のオチも強烈だったけどこの壮大系エンディングも絶品ですね。

このぱっちりひつじはどの作品も共通してブックレットに各楽曲に個別のイラストが添えられてまして、そこからも世界観を非常に大事にしてるバンドであることが伺えると思います。
まあ本当に独特なんで、必ずしも物語音楽とか好きな層に刺さる雰囲気じゃないとは思うけど…それでも特に2曲目の大作や終盤の2曲の流れについては聞かないのは絶対に損だと断言したい素晴らしさなんで、もっと多くの人に知って欲しいと思いますね。コミケでの売れ行きは上々だったみたいですがそれでもまだまだ過小評価されてるように思えてならないので。

関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

同人音楽初心者

Author:同人音楽初心者

メタル系とプログレ要素のある同人音楽を中心に扱います。
ゴシック系やサンホラ系の比重は少なめです。

最新記事
カテゴリ
VA (4)
Imy (1)
リンク
検索フォーム
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QLOOKアクセス解析