Tsurugi(kt of 24)「爽やかロック戦闘曲EP」

https://hiainotsurugi.booth.pm/

皆さん忘れずにダウンロードしましたか? この作品はweb上の同人音楽イベント「APOLLO」の期間限定のダウンロードアルバムなので今はもう手に入りません。

APOLLOもすでに第6回を迎えたということで、様々なサークルがこのwebイベントに合わせた特別な企画作品を発表するようになってきましたが、それにしたってこのサークルほどに豪華な企画作をぶつけてきたサークルは他にいないんじゃないでしょうか。
なんせ、販売してる作品よりも収録曲が圧倒的に多くて(13曲!)しかも曲数が多いだけでなく内容的にもめちゃくちゃ濃密で捨て曲なしの素晴らしい曲だらけ、なのに無料ダウンロードだったんですよ???…ずいぶんと思い切ったことするなぁと驚いてしまいましたが…。期間限定&過去曲の詰め合わせだったとしてもサウンドクラウドで公開してない曲は実質的に新曲と変わらないと思うし…やっぱり思い切りすぎ。

先日の春M3で頒布された新作ミニアルバム「Our Fate」より先にこの無料企画アルバムを取り扱ってしまうのは順序が逆かなとも思いますが、でもぶっちゃけこっちのほうが断然メタラー向けな内容なんですよね。ロック要素が減退して全体的に落ち着いた作風になっている「Our Fate」に比べ、この企画アルバムは2ndミニアルバム「Higher than the Sky」と同様に全編がテンション高い疾走曲ばかり。一般のゲーム音楽好きリスナーならいざ知らず、メタラー的にはこっちのほうが数段美味しい内容であるのは否めないところです。

とはいえ、この企画作はわざわざ「戦闘曲」とタイトルが付けられてることからも分かるように、Tsurugiさんにとってはロック調の楽曲というのはあくまでRPG等における戦闘のシチュエーションに則した曲調であって、ロック要素がTsurugiさんの音楽のアイデンティティに関わる不可欠な構成要素ではないのかもしれない?
にしてはロック的な音作りが非常に巧みだし(特にドラムのリズムパターンが卓越してる)、そのロックなグルーヴが他の同系統のゲームサントラ風の同人音楽と差別化し得る決定的な要素になってるのは違いないと思うんですよ。少なくとも自分にとってはロック要素が必須。
Tsurugiさんの音楽の大きな特色になってる壮麗なストリングスサウンドも、単体だとちょっと物足りないというか? やはりストリングスサウンドがロックサウンドと融合することによって初めてTsurugiさん「らしさ」があふれる独自のサウンドになるような気がするんです。
もちろんこれはメタラーとしての意見であって、ゲーム音楽好きな人達だと感じ方はまた異なるとは思うんですけどね。

前半の収録曲、1曲目~7曲目あたりは2nd「Higher than the Sky」の収録曲と割と同路線の爽やか疾走曲が並んでいます。どの曲もTsurugi節が全開って感じ。壮麗なストリングスの音色と軽快なロックサウンド、イメージ的にはまさに2ndミニアルバムの青空なジャケ画像そのままの「天空を駆け抜ける」ロック。戦闘曲と銘打たれてはいるんですけどやっぱり空飛んでるイメージのほうが強いかなぁ。戦闘曲に付き物の緊迫感や勇壮感は控え目でポジティブな爽快感や開放感のほうが勝っている。
過去曲を詰め合わせた企画作品ということもあって作品全体の構成はあまり気を配られてない感はあり、似た曲調が連続していてバラエティには乏しいんですがそれでも飽きが来ないのは1曲1曲のアレンジの完成度が高いおかげだと思う。普通ならこれだけ似た曲調ばっかりだと途中でダレてしまうんですけどこのアルバムは中だるみが無いんですよ。やっぱり凄い。
サウンドのクオリティは総じて高めだけどギターの音だけ打ち込みなので、そこだけチープさが残ってるっていうのは2ndのときの感想にも書いたけど、でも楽曲とアレンジの完成度が高いからほとんど気にならないんですよね。むしろ中途半端に生ギターにするよりかはこのままで良いような気がする。よっぽど上手いギタリストが弾くのでもない限りは。

8曲目、9曲目あたりでは少し趣きが変わって、少しだけダークで、ポストハードコアを意識したかのようなテンポ抑え気味でキックの重みを強調した曲調にシフトします。でも「爽やかロック」な基本方針には変わりはなし。

10曲目以降は、オルガンの音色や変則的リズムが随所に取り入れられていて心なしかプログレ感が強い作風になっています。そもそもゲーム音楽ってキーボードプログレから多大な影響を受けているジャンルなのでプログレっぽさが感じられるのは当然といえば当然なんですが、Tsurugiさんの音楽はそういった間接的な影響を実に巧みに、そして自然体で見事に表現しているように感じられます。

特にお気に入りの曲を選ぶってのが難しいんだけど、裏を返せばそれだけ良い曲ばっかりで楽曲の平均点が非常に高い、そんな企画アルバムだと思います。
個人的にはゲーム音楽系の同人音楽の「理想」に最も近い音楽と言ってしまっても過言ではないくらい。それほどに良い。ゲーム音楽が好きな全てのリスナーにおすすめしたい作品なんですが特にメタラーには絶対聞いて欲しい。
…とはいえこの企画アルバムはAPOLLO限定ダウンロードだったのでもう手に入らないんですよね…残念ながら。ダウンロードし損ねた方は作風の近い2ndミニアルバム「Higher than the Sky」を是非ともどうぞ。
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Grey Lethal「余波鋭鋒 '17」

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https://greylethal.bandcamp.com/album/17
新世代同人メタル勢の中でも屈指の実力派サークルだと思うんですけど何故かメタラーに認知されてない気がしてもどかしい思いをしている…って毎度毎度言ってるような気がしますが、そんな隠れた実力派サークルGrey Lethalの最新シングル、なんとこれも無料配布されてたんですよ。現在も無料(投げ銭方式)でダウンロード出来ます。今からでも全く遅くないので同人メタラーの皆さん是非とも聞いてください。

無料配布なんですけど、内容的に薄いからとりあえず無料で配っとけ的な適当な動機で無料にしたとは思えず、むしろその真逆、このシングルってGrey Lethalの作品の中でも過去最高の充実度なんじゃないの? まじで。このサークルの入門用に打って付けな内容だと思う。

今回のシングルは3曲のうち2曲が過去曲(ボカロ曲?)のリメイクのようでして、そういう意味では少し変則的な作品と言えなくもないけど元のボカロ曲は全然知らなかったし普通に新作として聞いて問題なさそうな感じですかね。
ていうか、わざわざリメイクするくらいだから2曲ともめちゃくちゃ良い曲なんですよ。特に表題曲の「余波鋭鋒」はGrey Lethal最高のキラーチューンかもしれない…?

http://www.nicovideo.jp/watch/sm15597105
ちなみにこれが「余波鋭鋒」のボカロバージョンみたいですね。音質以外はGrey Lethalのスタイルがこの時点で早くも完成していたことが確認できます。ていうかコメントでデスボがミクじゃないことを叩かれてる…ボカロ音楽って面倒くさい…。
まあそれはさておきとにかくこの「余波鋭鋒」、名曲なんですよ。6年前の曲が最高傑作だと評するのはちょっと憚られるけどでも実際めっちゃ完成度高い。エモ&キャッチーなサビメロが最高すぎる。この飛翔メロスピっぽい?高揚感たるや。
更に言うとCメロがこれまた秀逸な出来で、サビの高揚感を維持しつつファルセット駆使したパートで盛り上がりを加速させるという二段構えの構成に痺れる。原曲の初音ミクとは比べようがないくらいラグランさんのボーカルは力強く説得力に満ちているし、ほんとリメイクしたのは大正解だったと言いたいですね。
ていうか曲名の余波鋭鋒は「なごりのきれあじ」って読むみたいだけど(元ネタはシェークスピア?)厨二漫画で出て来る必殺技みたいな語感あってカッコいい。

2曲目「陽の射す場所で逢えたなら」、これも元はボカロ曲っぽいけど原曲は見付からなかった。こっちはスローテンポのバラード…というにはリフがゴリゴリしてるけど、まあ歌メロだけならバラード風。ヘヴィに刻まれるリフとそれに絡むオルガンの音色にプログレ感あって素晴らしい。割と伝統的HR/HMスタイル寄りな曲調ですね。そしてラグランさんのエモーショナルな歌声によるメランコリックな歌メロが心を打つ。情感たっぷりに奏でられるギターソロも絶品。1曲目とはタイプ異なるけどこっちも名曲ですね。

3曲目「Steve Wake Up: Intraprefectural Ubiquity of Sciento-Romanticism」、これは完全新曲みたいですね。前の2曲とは異なりこの曲ではクリーンパート無しの徹頭徹尾アグレッシブで攻めまくる曲調。Djent的な複雑なポリリズムも多用されて非常にテクニカル志向であるのも特徴的。英詞なんだけど「スティーブ起きろ!」ってセリフだけ不意打ちで日本語で登場するのでちょっとびっくりする。

2ndアルバムにおいても顕著だったキャッチーさとアグレッシブさの程良いバランス感覚が今回も活きていて、3曲入りシングルながら無駄な曲が全くないのでこのサークルの音楽を初めて聞く方にも打って付けの内容だと改めて思います。
なんせ無料ですので、とにかく試しに聞いてみてください。特に1曲目がまじ名曲なんで1曲目だけでもどうぞ。基本スタンスはメロデスですけど今回はデスボ少なめだしメタラー以外も聞きやすいと思う。

Answer to the MOMONGA「Pre-peregnatio」

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https://answertothemomonga.tumblr.com/
女性ボーカルをフィーチャーしたオルタナ/ポストロック/マスロック系サークル「アンサツモモンガ」の無料配布作品です。無料とはいえ5曲も入ってるんで聞き応えは抜群ですよ。

本当ならば先日のM3でフルアルバムがリリースされるはずだったようですが、残念ながら制作が間に合わずに延期になってしまいました。で、その代わりに先行シングルならぬ先行EPとして今作が無料配布された訳ですね。

ていうかタイトルに「Pre」って付くのこれで3度目? さすがプリキュア好きなサークルと言うべきなのか…。まあそれだけ準備期間すなわち「溜め」が長かっただけあってフルアルバムは渾身の出来になると思われますし、今回のプレビュー盤でもその片鱗はしっかりと感じ取れます。

1曲目「Peregnatio」、2nd EPにもメタルコアの真似事っぽい小曲があったけど今回はDjent「っぽい」インスト。あくまで「っぽい」感じであってDjentとして聞いたら違和感ありまくりだとは思いますが…まあ基本的にオルタナ/ポストロック系の音作りを主としてるサークルですからね。チャレンジ精神及び試行錯誤が表れてる曲とも言えるか。
やっぱりアンサツモモンガはクリーントーン主体のほうが合ってる気がするけど…でも「Who Killed AnsatsuMomonga?」はこのサークルの最高傑作だと思うんであの感じはまたやって欲しい気もする。

2曲目「無機質な投影」はこのサークルの確かな進歩が形になっている今回のハイライト曲でしょう。ファンキーに細かく刻まれるリズムギターとグルーヴィーなベースラインがインパクト大。演奏面での進歩がしっかり感じられる。テクニカルでありながらもマスロック的な変態性が鼻に付かず大衆性もアピールする出来栄えだと思います。
そして演奏面のみならず、かゆさんのボーカルも大きく進歩を遂げてるのが重要ポイント。近作の「Pre」シリーズではインスト曲やボカロ曲ばっかりでかゆさんボーカルはご無沙汰だった訳ですが、どうやらその間にしっかりボーカルスキルも磨いておられたようですね。2nd EPの頃は歌唱に不安定感も見受けられましたが今作のボーカル曲では見違えるほどに力強い歌唱を披露してます。「歌モノ」としての完成度が以前とは段違い。元々から声質には光るものを持っていらしたと思うしこの進歩は大いに歓迎すべきものだと思います。もちろん歌い上げるメロディ自体も優れた出来。

3曲目「Catoblepas」は以前収録されていたボカロによるdemo曲をかゆさんボーカルに差し替えたバージョンでしょうか。やはりかゆさんボーカルになったことで明らかに楽曲の説得力が増してる。シューゲイザー的な浮遊感とうねるベースラインが魅力的な1曲。

4曲目「無い物ねだり」においてもかゆさんのボーカルが輝いてます。ほんと良い曲ですよ。この曲ではテクニカルな要素は控え目ですがその分メロディの良さが際立ってる。リラックスしたムードのサブカルオシャレポップスといった感じ。これはアンサツモモンガ史上で最も一般向けな作風で歌モノとしての完成度も高いので是非とも多くの人に聞いて欲しいですね。

5曲目「Endroll in the Bedroom」…タイトルからしてフルアルバムのエンディング曲かな? これはボカロによるdemoバージョンですがフルアルバムではかゆさん歌唱バージョンになるのでしょう。ポストロック的な穏やかな雰囲気とシューゲイザー的な浮遊感、そしてキラキラしたシンセの音色がエンディングに相応しい心地良い空気を生み出してますね。

このアンサツモモンガはジャケのアートワークのセンスの良さも魅力の1つでして、今回は無料配布ということで簡素なデザインなんですがそれでも十分にセンスの良さを感じさせる。メンバーがデザインも担当してるのって改めて強みですよねえ。デザインを外部に依頼してるサークルだとアートワークのイメージがちぐはぐなこともあったりしますからね。

そんな訳で、フルアルバムへの期待が高まるプレビュー盤となっております。
きっと秋M3では満を持してフルアルバムが発売されると思いますので是非チェックして頂きたいですね。ポストロック、マスロック系が好きなリスナーは勿論のこと、普通に女性ボーカルのロックが好きなリスナー全般におすすめしたい。

Liesvect「Liesvect 3 -verdict-」

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http://liesvect.wixsite.com/liesvect/liesvect3

劇的な音楽を奏でることを信条とした新進気鋭のメタルサークル、Liesvectの4作目。フルアルバムとしては2作目ですね。今回も気合が感じられまくりの必聴作品に仕上がってますよ。

昨年秋、このサークルが持てる力を全て投入して作り上げたであろう大ボリュームのフルアルバム「-Observer-」では、M3デビューから1年しか経っていないサークルがあれほどの濃密な内容のフルアルバムを生み出したことに衝撃を受けましたが、それからたった半年のインターバルで再びフルアルバムが届けられることになろうとは…全くもって驚異的なスピード。オリジナル系でフルアルバムを半年で連発したサークルなんてセミプロ級を除けばかなり珍しい事例なのでは? 東方アレンジでも半年でフルアルバムに漕ぎ着けるのは簡単ではなさそうに思えますし。改めてこのLiesvectのモチベーションの高さに驚かされますね。

もちろん内容についても、制作期間の短さに比例して完成度が下がったなんて事は無く、前作の充実度をそのまま引き継いだ安定の内容になっています。楽曲そのものの出来栄えも相変わらず良いんですが、このLiesvectの大きな「売り」の1つであるテクニカルなギターワークはさらに洗練されてその魅力を増しているように感じます。

基本的に前作の延長線上の内容と言って良さそうなんですが、大きな相違点としてはアルバム全体の構成ですね。前作では3人のコンポーザーが楽曲を制作していて、各々がジャンルを気に留めない自由な作風で制作していたためか、全体としては統一感が希薄で「コンピレーション的」とさえ感じられてしまう散漫さが出てしまう弊害があったんですよね。
前にも書いた気がしますが「バラエティ感」と「散漫」というのは紙一重で、おそらく制作側としてはバラエティ感のつもりだったんでしょうけど個人的には後者としか感じられなかったんですよ。作品を貫く「軸」が存在しない、そんな不安定な感覚が漂う構成でした。

しかし今回の新作においては、作曲者がメインコンポーザーのBlueさん1人に絞られたことで明確な統一感が生まれましたね。徹頭徹尾ドラマチックでテクニカルなメロデス的な作風を貫くことにより、このLiesvectというサークルがどこに向かっているのか、何をどういう風にリスナーにアピールしたいのかがはっきりと示されたことは重要だと思います。
メタルに縛られる必要はないとしてもやはり方向性の中心となる「ブレない」要素があって欲しいし、これだけモチベーション高いサークルなんですから漫然としたコンセプトで活動し続けるなんて勿体ないですよね。

ただ、こんな風に書くと、じゃあ前作のBlueさん以外の楽曲は無駄な要素だったのか? って受け取られそうですがそんな事は無くて、ちゃろんさん作の2曲とかむちゃくちゃハイクオリティだったしあの2曲がアルバムの大きな聞き所になってたのは疑いようのない事実なんですよね。Blueさん以外の曲も個々の楽曲としては非常に素晴らしかったんですよ。ただ統一感が無かったっていうだけで。
っていうかむしろ、ちゃろんさんの曲が素晴らしすぎたので、デスメタルと一緒くたにアルバムにぶち込む雑多な構成にこそ違和感を抱いていたというのが正直なところです。デスメタルとポップスの食い合わせって相性悪いのは当然で、デスメタルを食べ物に例えるならば激辛調味料ですよね、刺激の強さが魅力だけどあらゆる味を呑み込んでしまって辛さばかりが印象に残る。まあメタラーは感覚が麻痺してるからデスメタルとポップス混在してても普通に聞けちゃうんですけどね…。

そして、今作はメニューを減らして辛さを全面に出した本格カレー専門店としてリニューアルした(?)Liesvectですけど、ちゃろんさんの生み出す繊細な味に未練がないとも言い切れないけどでもやっぱりここは潔くカレー屋として頑張って欲しい訳ですよ。ミチザネさんのスクリームをメインに据えて活動していく以上は純然なポップスを並行して収録するのは得策ではないと思いますが、でも単にアグレッシブなだけではなくキャッチーな女性ボーカルの歌メロやテクニカルなアレンジもLiesvectの大きな売りですからね、そこにはまだまだ大きな可能性が拓けていますよね。多彩なジャンルを取り入れつつも散漫さを出さないってのが調理人の腕の見せ所ってことになるでしょう。

では各楽曲についてですが、まず1曲目「Gates」、前作の1曲目とほぼ同タイプの「分かりやすいサビ」があるメロデスチューン。ジャンルが多岐に渡っていた前作においては1発目がデスメタルであることに一般リスナーを遠ざける弊害を感じたりもしましたが、今作においてはメロデスな作風が一貫していることもあってこのアグレッシブな曲を冒頭に配置することに必然性が感じられます。
申し分のないメロデス曲だと思うのですが、ただ、音が依然として軽めに聞こえてしまう事と、あとスネアの金属音の残響がノイズっぽく聞こえてしまうのが惜しい…。楽曲の出来とギターのテクニカル度は界隈でも確実に上位に入るレベルだと思うんで、あとは残る課題は音作りだけですよね。これを次回作で解決してくれれば完璧なんじゃないかと。

2曲目「Phantasmagoria」は前作にも参加していた女性歌い手の月乃雛さんをフィーチャーした曲。この曲も前作の2曲目に近い作風ですが、相変わらず印象的なキャッチーなメロディが満載でまさにBlueさんの本領発揮といった出来栄え。1番のサビと2番のサビのメロディが違うというサンホラのような曲構成にも驚き。
ボーカルの月乃雛さんは歌唱自体の安定感も然ることながら、声質がBlueさんの作る楽曲のイメージにぴったり合ってますし、今後もLiesvectで歌って欲しいと願わずにいられませんよね。専属ボーカルになってくれれば一番ですけどね、それはさすがに難しいか…。
ギターソロの流麗さも前作より更にレベルアップしていて聞き応え抜群。

3曲目は「Redemption」…でいいんですよね? どうやら手違いでCDのパッケージに記載されてる曲順が1個ずつズレてるみたいなんでちょっとややこしい。詳しくは公式ツイッター参照。
ボーカルは続いて月乃雛さん。この曲においてもアグレッシブなメロデスリフとキャッチーな女性ボーカルメロが見事に両立されてる。2曲目とこの曲の作風をLiesvectの基本的な方向性、すなわちLiesvect「らしさ」だと認識して良さそうですかね。テクニカル、ドラマチック、アグレッシブ、この三拍子が完璧に揃ってる。

4曲目「Vlce」はクリーンボーカル無しでミチザネさんの独壇場。BPMは抑え目ながらも突進力の高いメロデスリフによって勢いを感じさせる楽曲。

5曲目「Verdant Machine」はDjent的なプログレッシブな雰囲気を充満させたミドルテンポ曲。やはりテクニカルな演奏には前作からの確かな進歩を感じさせる。シンセサウンドの入れ方も絶妙ですね。クリーンボーカル無しかと思いきや終盤近くになって月乃雛さんのボーカルが入るという異色な構成。

6曲目「Nexus」、再びミチザネさんのスクリームオンリー。この曲もアグレッシブでありながらもシンセの入れ方にプログレッシブなセンスを感じるかも。ミチザネさんは前作で披露したクリーンボイスけっこう良い感じでしたし、この曲あたりでクリーンで歌って欲しかった気もするかな?

7曲目「Sheen」は界隈でも屈指のハイトーン&パワー系の女性ボーカルであるおこげちゃんさん歌唱曲。言うまでもないけどやはりこの歌唱力は圧倒的。っていうかおこげちゃんさん担当曲に作中で一番テクニカル&変態的なアレンジを詰め込むっていうのがなかなか攻めのスタンスを感じ取れますねえ。特に2分半あたりからの間奏でのキモい(褒め言葉)リフの連続攻撃がやばすぎ。しかしこれによってAdust Rainを始めとする他のおこげちゃんさんフィーチャーしたサークルの楽曲との差別化に成功してる気もする。
もちろんメロディ自体もおこげちゃんさんのハイトーンに相応しいドラマチックさを備えていて文句なしにキラーチューン。

8曲目「Remains from」、前作でも終盤の「Ashes」において複雑めな曲構成のドラマチックな楽曲を配置していましたが、今作ではなんと10分近くの長尺曲。終盤にクライマックス的な盛り上がりポイントを置くという美学が見て取れますね。終盤に転調して登場するサビメロが特に好き。

9曲目「Fatel Vision」、これは前作の時点で既にサウンドクラウドで公開されていたインスト曲なんですが個人的にめちゃくちゃ気に入ってた曲なんですよね。てっきりお蔵入りになったのかと思いきやこうしてアルバムに収録されたのは嬉しい限り。
それにしても改めて聞いても名曲ですよねえ…透明感あふれる爽やかで軽やかな疾走感とフュージョン寄りなスタイリッシュでテクニカルなギターワーク…Liesvectで一番好きな曲かもしれん…っていったら言い過ぎかもしれませんがとにかく良い曲ですよ。今作のアグレッシブな作風とは合わないかな?と思いきや不思議なくらいエンディングに相応しい感じになってる。

ジャケットは今回はめちゃくちゃ硬派。オタクイベントで売られてるCDとは思えないほどに硬派。ディスクユニオンに置いてあっても違和感ないでしょうねこれは。

次回作はいつになるのか…秋にまたアルバム出ちゃうのか? さすがにそれはハイペースすぎて息切れが心配になりますし、やはりここはクオリティアップのためにも1年はかけて欲しいところでしょうか。といってもすでに楽曲とギターは完璧だからあとクオリティアップするべきなのはサウンドプロダクションだけですけどね。

REJECTION「RESISTANCE」

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https://twitter.com/rejectionjp
同人メタルの未来を切り拓くのはこのサークルしかいない!と改めて確信しました。様々なジャンルを貪欲に吸収し進化を続け、現在の同人メタルシーンの最先端を突き進むREJECTIONの最新作でございます。

全ての同人音楽リスナー必聴の傑作デビューアルバム「COSMOS」からたったの半年で再びそれに匹敵する傑作が生み出されたことには驚愕せざるを得ないですね。短い制作期間にも関わらず、メロディ、アレンジ、収録曲数、どの点においても一切の妥協の無い完璧な作品に仕上がっているというだけでも恐るべき事なんですが、それだけでなくてですね、サウンドプロダクションや音楽性そのものまで前作より明らかに進歩してるんですよ。信じられますか? 自分もそれなりに多くの同人音楽サークルのCDを聞き続けてるつもりなんですけど、半年でここまでパーフェクトな新作に至ったサークルって他に例がないような気がするんですよ。
これは主催の赤ヘルさんの才能とそこからあふれるアイディア、そしてそれらを支えるモチベーションがいかに充実しているかを物語っていると思うんです。

前例がないのはそれだけじゃない。この最新作って前作から大幅に音楽性が変更されてるんですけど、下手すると「別のサークル?」って思われかねないくらい大胆な変更。にも関わらず、「なんだこれ?求めてる音と違う」みたいなネガティブな感想を引き出すどころかむしろ従来の魅力をそのまま保持しつつ更に拡張したことにより多大なる説得力を内包しているという驚異の事実。ジャンル変更したのにイメージを全く崩さないって、かなり神がかった芸当だと思うんですよね。
しかもその変化した方向性には、時代の流れを敏感に捉えつつも単に流行に流されるだけではない優れた先進性を感じ取れるし、これを成し遂げられるサークルは滅多にいないでしょう。それが冒頭でちょっと大袈裟に言い放った「同人メタルの未来を切り拓く」という言葉の根拠になっております。でもそれが誇張ではないということは実際に聞いて頂ければ分かるはず。

前作からのジャンル変更というのは具体的には、ラウドロック中心だった前作からダンサブルなEDMチューンを中心にした作風に移行したことですね。こう書くと、単にラスベガスみたいなトランス系シンセサウンドを導入したラウドロックになっただけと思われそうですが、実際はそうではなくてロック要素のないインストのEDM曲がアルバムの中心になっているという。やはりこれは大胆な変化ですよ。
ラウド系でよくあるようにEDMな小曲をインタールード的に挟むのではなくてインスト曲がメインになってるんですからね。ジャンルを越境しただけではなく、歌モノ中心→インスト中心っていう様式の変化までやってんのに、それでいて従来のイメージを保ってるなんて…。うーん改めて奇跡的。

なぜそんな離れ業が成功しているのかと言えば、やはり「軸がブレてないから」。これが最重要ポイント。
「ジャンルを越えてバラエティに富んでる」なんていう宣伝文句は安易に使われがちだけど「バラエティ」と「散漫」は表裏一体なので、ちょっとした匙加減の間違えで散漫に成り果ててしまうことは珍しくないこと。
しかしREJECTIONの場合は、1stアルバムの魅力の中核になっていた「明るくてキャッチーでありながも切なさを内包したメロディ」と「壮大なスケール感を持つアレンジ」、この2要素が一貫しているからこそジャンル変更したとしても違和感が全くない訳ですね。やっぱりサークル…というかアーティストとしてブレない軸があるっていうことは何にも代えがたい武器になり得ると思うんですよ。

そんな訳でこの2ndアルバム「RESISTANCE」は素晴らしい内容なのですけど、じゃあこの2ndは進化を遂げてるから1stの上位互換なのか?っていうとそうでもなく、やっぱり個人的には1st「COSMOS」への思い入れのほうが強いですね。今作のEDM調に馴染めないって訳じゃなくて、単純に1stのほうがメロディが好き。最大のキラーチューン「Everlasting Life」もありますしね。
でもまあ、1stと2ndどっちが上かなんて比べる意味はあんまり無いと思うし、両作品ともREJECTIONの魅力が最大限に発揮された傑作だと思うんでどちらも聞いて頂きたい。どちらか1作だけ聞いて判断して欲しくないですね。

では各楽曲について具体的な感想を書いていこうと思いますが、まず1曲目「Resistance (intro)」、まあタイトル通りのイントロ曲で1分程度しかない短い曲なんですが…これが非常に重要な役割を担ってる。ありがちなイントロ曲とは訳が違う。
というのは、この曲はゴリッゴリにヘヴィなギターサウンドをバックにしてゲーム音楽風の壮大なストリングスが展開するんですが、この時点ですでにラウドロックと壮大サウンドというREJECTIONの重要な構成要素が示されているからなんですね。今回の新作は前作に比べるとラウドロック要素は減っているので、この序盤においてラウドサウンドを披露することが作品全体のバランスに貢献してることは間違いない。加えて、明るい曲調が中心のアルバムをこういうダークな曲調で始めることが絶妙なアクセントにもなってるし、更に言うと、対になっているアウトロ曲とこのイントロが作品を挟み込むことで作品のトータル性も強化しているという。ほんとに重要なイントロ曲。

2曲目「Sorrow Of Colossus」、これが今作のハイライト曲でしょう。インスト曲でありながらもリード曲としてイベント前にフル公開された曲であり、個人的にも赤ヘルさんの天才性を再確認する根拠にもなった決定的な曲。
簡単に言えばダブステップと壮大シンフォニックサウンドを組み合わせた曲なんですけど…シンフォニック要素のあるダブステップというよりかはダブステップ要素のあるシンフォニック曲と言ったほうがしっくり来るかなぁ。「壮大さ」のほうに重きが置かれてるように感じる。クロスフェード聞いたときは前者かと予想してたんですけどね。実際はシンフォニックパートのほうが長く感じるし。
ていうか、シンフォニック+ダブステップという組み合わせならば他のサークルでも聞いたことあるんですけど、ここまでの圧倒的なスケール感と完成度を実現した同人音楽なんて他にあんまり無さそうですよねえ。シンフォニック部分もダブステップ部分も共にぐうの音も出ないほどに完璧。付け焼き刃的な中途半端さが皆無。ほんと天才的としか言いようがない。
しかも、単にジャンルを足し算した以上の凄みをひしひしと感じるんですよね。2つのジャンルがシームレスに繋がり違和感が全くない。まさにジャンルを超越した、プログレッシブと評したくなるほどのドラマ性。

3曲目「Sinner feat.オカメP」、これは作中で唯一の赤ヘルさん作曲ではない曲のようで、オカメPというボカロPからの提供曲っぽいですね。しかし他の曲から浮いているということもなく、REJECTIONのイメージにぴったり合ってる曲になってるかと思います。ラウドロック調にシンセとDJスクラッチを乗せたミクスチャー的アプローチと赤ヘルさんの中性的なボーカルが歌い上げる切なくも甘い歌メロが見事に調和してる。メロディに歌謡曲っぽさもあってそこが赤ヘルさんの曲との相違点かな。しかし賑やかで甘い曲調とは裏腹に歌詞はなかなか世知辛い感じで(いきなり「四畳半で盗んだタバコに火を付ける」だからなぁ…)けどそのミスマッチ感も面白い。

4曲目「Just Kidding」、これは昨年の筑波大DTM部のコンピに収録されてたインスト曲ですが、これも2曲目と並んで赤ヘルさんの天才性を強く印象付ける傑作ですね。ファンタジックでシンフォニックな出だしからエレクトロな曲調に移行する展開が実にインパクトあります。多彩な音色が入り乱れるオモチャ箱のような楽しさが全編に満ちあふれており、これもまたジャンルを超越した天才的センスを感じずにはいられません。基本はダブステップ等のEDM的な手法を用いて作られてるとは思うんですが、どことなくロック的なグルーヴを感じるというか? それによって自分のように普段EDMを聞かない人間も馴染みやすい音になってるような気がするんですよね。

5曲目「Sweet Sweet Valentine Day」、これはバレンタインに公開された企画曲ですね。この曲のみ女性ボーカルをフィーチャーしており、バレンタインを題材とした甘々な電波アニソンorアイドルソング的な少し異色な曲になっております。この曲もめっちゃ良い曲だとは思うんですけど…でも以前も書いた通りやっぱりイレギュラー性の濃い曲に感じるかなぁ。明るい曲という意味ではREJECTIONの基本路線と合致してるけどちょっと糖度が高すぎるというか…。
そういや前作も5曲目が「IMAGINE THE FUTURE」という筑波大のメッセージソング?のメタルコアアレンジだったけどあれもボーナストラック感あったし、今回の5曲目もアルバムのド真ん中に位置するボーナストラックなのかなと、個人的にはそう勝手に解釈しております。あと零さんのギターソロは何度聞いてもカッコよすぎる。

6曲目「1995」は完全に1stアルバムの路線を踏襲した楽曲で、ラウドロック+甘い歌メロの組み合わせにめちゃくちゃ安心感あります。ノスタルジック感あふれるメロディ&歌詞、それを支える骨太なバンドサウンド、これぞREJECTION流のラウドロック。サウンドプロダクションも向上して完成度はますます上がってますね。もちろん赤ヘルさんのボーカルスキルも前作より上がってる。REJECTION特有の甘く切ない音楽は赤ヘルさんの歌声なしでは成立しないものであるのは疑いようがない所ですね。
個人的にはCメロのオルゴールをバックに切ないメロを歌い上げるパートから間奏に移行する部分で、歌がいつの間にかシンセの音色に変わってるところが特に気に入ってます。

7曲目「Walking Through」は再びインストEDMチューン。もちろんインタールード的な小曲ではなく5分近くの尺があります。しかしその長めの尺を飽きさせずに聞かせるだけの工夫が随所に施されてる。シャッフル系の軽快なリズムにワブルベース等の多彩な音色が絡んで非常に賑やかな音を作り出しています。自分はEDMに疎いんでそれぞれの音色の名称は分かんなかったりするんですが…とにかく賑やかで楽しい。「Just Kidding」同様、やっぱりロックに近いグルーヴ感があって親しみやすい気がする。チップチューンなパートも良いなぁ。

8曲目「Twinkle,Twinkle」、ボーカル曲の中ではこれがハイライトかな。タイトル通りめちゃくちゃキラキラな曲。REJECTION流の多幸感ラウドロックの真骨頂とも言える名曲。
誰もが知る童謡の「きらきら星」のラウドロックアレンジとも言えそうな曲でして、きらきら星のメロディにオリジナルのメロディを継ぎ足したような曲構成なんですがそのオリジナル部分がめっちゃ良いんですよ。既存の童謡をベースにしてここまで発展させられる手腕に驚かされます。個人的にREJECTIONに求めてる音が100パーセント実現されてると思うしほんとに最高な曲。

9曲目「The New Beginning (outro)」、アウトロなんだけど役回りは非常に重要。1曲目と同様にアルバムのトータル性において欠かせない存在。RPGクリア後に流れるエンディング曲みたいな雰囲気だけど、2分未満の短い曲なのにメロディめっちゃ良いですよね。実に感動的です。

10曲目はボーナストラックで「Just Kidding」のリミックスバージョン。スピードコアというジャンルらしい。ていうかこの曲ってアップテンポになるとクリスマスソング感ありません? クリスマスに聞きたい。

そんな訳で、ラウドロックからEDMからアニソンからゲーム音楽まで全てを飲み込んだ非常に対象範囲の広い作品になってますのでほんと多くの人に聞いて頂きたいですね。前作と合わせて全ての同人音楽リスナーに聞いて欲しい。まじで。
赤ヘルさんはおそらくこれからリアルでご多忙な時期だと思うので次のアルバムはおそらく来年以降かなとは思いますが、REJECTIONはまだまだ進化の可能性を大きく秘めていると確信しますし勢いは止まらないと思いますね。
プロフィール

同人音楽初心者

Author:同人音楽初心者

メタル系とプログレ要素のある同人音楽を中心に扱います。
ゴシック系やサンホラ系の比重は少なめです。

Information

↓当ブログ的に超絶おすすめなサークル2選!!!
必聴です!!!!!

http://lostmyproust.jimdo.com/

https://tomorro4.bandcamp.com/

↓その他のおすすめサークルはこちらにまとめてあります
http://adtoe.blog.fc2.com/blog-category-75.html

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